時間泥棒の思い出

アイドルヲタクがツイッターでは文字が足りない時に書く独り言です。あなたの貴重な時間を泥棒します。

ゆい様

高校の頃の話だ。

 

私の進学した高校は進学校だったのでそこそこ真面目な生徒が多かった。

その高校では、2年次にあがる際に文系・理系に別れるという制度があった。

 

理系は2クラス、文系は4クラスという割合で分けられるのだが、理系を志望している人がとても多かったのでテストを行なって成績が上位の人から希望のコースに入れるというしくみになっていた。 

 

自分は理系を志望していたが、勉強のモチベーションが下がってしまって1年からさっそく遅れをとってしまっていたので文系になっちゃうかなーとおもったら志望度が高かったからかわかなないが理系に入れてもらうことになった。

 

でも仲ののいい友達はみんな文系だったので、2年次からは新しく人間関係を構築する必要があった。

 

そうして始まった2年生だが、クラス分けの制度のおかげで超真面目な生徒ばかり集まっていた。自分みたいな勉強のモチベーションの低い人は正直すごく浮いていた。

 

それでも、周りの人と関わらず生きて行くのは難しかったのでなんだかんだ話を合わせ結構仲良くなったりした。男子だけ。

 

このクラス、男はいかにもガリ勉という感じのいわゆるイケてない感じのメンズが多かったのに対して、女の子は結構おしゃれな感じのちょっとイケてる雰囲気を出していた。

 

それなので基本的に女子は同じクラスのメンズとはあまり話さず、別の文系のイケてる男と仲良くしていたり、他校の男と付き合ったりなど、自分を含めた同じクラスの男には一切興味がない様子だった。

 

そんな感じなので私は完全に高校で彼女をつくるということを諦めていた。

 

そんな感じの女子たちも、さすがに時間が経つにつれてちょっと話したりするくらいはするようになった。

 

しかし、女子のスクールカースト上位に君臨するルックスの良い女子たちは一切口を聞いてくれないとう状態だった。

 

そんな子達の中でダントツでかわいい「ゆいちゃん」という女の子がいた。

顔立ちが圧倒的に整っていて、スタイルも抜群、そして男を見つめる視線は氷のように冷たかった。その振る舞いは、世間を騒がせた沢尻エリカのような感じだったので、自分は畏敬の意を込めて裏でゆい様と呼んでいた。

 

ゆい様は本当に徹底していて、同じクラスの男と話しているのは本当に見たことがなかった。いつもいけてるグループの女の子を引き連れ、近寄りがたいオーラを放っていた。成績は優秀とっても優秀だったしスカートは短かった。

 

そんなゆい様に、彼氏がいるということがわかった。

そしてその彼氏は別の高校の地区では比較的強かった野球部のキャプテンらしい。

 

かわいくて成績優秀なゆい様と強豪野球部のキャプテン、本当にお似合いだなあと思った。自分みたいな根暗落ちこぼれのスクールカーストの三角形の一番下の方にいるやつからみたらゆい様のような高嶺の花は話しかけることすらおこがましいと思った。

 

しかし、いろいろ話を聞いているとどうやらその強豪高校のキャプテン、笹川というらしんだが名前を聞いたことがある。

出身中学を聞いて確信したのだが、中学校の陸上大会で仲良くなった奴だった。

 

高校では超絶根暗ぼっちの自分だが、中学のときは自分で言うのもあれだがめちゃめちゃ人気者だった。調子に乗りまくっていろいろな人に話しかけまくっていて初対面の人ともすぐに仲良くなっていた。

 

中学の陸上大会には、4種競技という種目があって誰もやりたがってなかったので自分が立候補した。種目はたしか以下の通り

  1. 400メートル走
  2. 100メートルハードル
  3. 砲丸投げ
  4. 走り高飛び

 

陸上大会は、練習の時間が設けられておりみんな黙々と自分の先行した競技の練習をしていたのだが、私はというとひたすら砲丸投げの練習だけをしていた。

理由は一番楽だから

4種競技なので他の競技の練習を一切せずに砲丸投げの練習をひたすらしていた。

 

そして迎えた陸上大会の当日、初めの種目は100メートルハードルだった。

さっき言ったようにハードルの練習を一切やっていなかったが、怪我をしたくなかったので飛び方だけはなんとなく数回練習していた。

 

そして、100メートルハードルのスタート地点に立つ周りにはとても体格の良い選手が揃っていてこれはもう勝ち目がないなと思っていた。

しかも噂によると短距離走で市だか県だかの選抜になってる人も同じレーンにいるらしい。

 

絶望的な状況の中ピストルの音とおもにハードル走がスタート。

必死に走っていると、なぜか自分の前には選手がだれもいなかった。まさかの先頭。

だれもが予想もしていなかった展開だったとおもう。

実際には最後の短い直線で選抜の選手に抜かれてしまったのだが、それも僅差だった。

 

終わった後選抜の選手が話しかけてきて、「めっちゃ早かったな、負けるかと思ったわ」と言ってきて、実は砲丸投げの練習しかしてない話とかしたらとっても仲良くなった。

 

その選手は野球部で高校からスカウトを受けるくらいの超すごい選手で島根と言うらしい。

 

島根と仲良く喋ってると、島根くんと知り合いっぽい人がいてその人とも仲良くなった。それが笹川だった。

 

砲丸投げしか練習してない話と、練習してないハードルがやたら早かった話をしたらあっという間に仲良くなった。

 

そして種目は砲丸投げ。練習の成果を発揮する時がきた。

結果からいうとビリから2番目だった。ビリが笹川

 

一番練習した砲丸投げでビリ2だったのが情けなかったが、とりあえずビリではない。とりあえず自分のことを棚に上げて笹川をからかいに行くことにした。

すると笹川は。

「俺、利き腕傷めたくないから反対の腕でやったんだよね」

 

実質ビリだった。

 

島根も笹川も野球のスーパープレイヤーなので運動神経は抜群。

どの競技をやっても上位で、俺はというとハードル以外はほとんどビリ争いをするという結果だった。

 

結果は残念な感じだったが、島根、笹川以外も4競技やってた全員と仲良くなってすごく楽しかったので、個人的には優勝した気分だった。

 

笹川とゆい様は同じ中学だったのだが、きっと中学の時から付き合っていたのだろう。

笹川は強豪高校のキャプテンになり、ゆい様は成績優秀のマドンナ。

とってもお似合いだと思った。

 

そんなこともあったのでゆい様と笹川の話をしたかったのだが、本当に男子に笑顔一回も見せたことないんじゃないかってレベルで拒絶されてたので話にいく勇気はなかった。男子全員ゆい様にはビビっていた。

 

ある日、移動教室でたまたまゆい様と2人きりになったことがあり、やっべー気まずいなーと思ったらゆい様の方から話しかけて来た。

内容は忘れたが、笹川の話とかじゃなくてなんてことはない世間話だった。

 

普通に笑顔で楽しそうに話しかけてくれたので心底びっくりしたし、たぶん笹川から私のことを聞いてたんだろうなーと思った。

初めて間近でみたゆい様の笑顔は眩しいくらい魅力的で、もっとこういう笑顔を普段からみせたらクラスの男子はみんなゆい様を好きになったんだろうなーと思った。

 

それからは2人きりになることはなかったので、ほとんど話さず高校を卒業した。

 

そのゆい様が昨年結婚したと友達伝いできいた。相手はしっかりした消防士らしい。

写真を見せてもらうと、頼り甲斐のありそうな旦那さんと、すっかり角がとれて丸くなった感じの笑顔のゆい様が写っていた。

 

幸せそうな写真を見て嬉しい気持ちになった一方で、あの氷のようなゆい様の視線も魅力的だったなーとちょっと寂しい気持ちにもなった。

 

この話を通して何を伝えたかったかというと、ツンデレって最高ということだ。

 

以上